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タイ古式マッサージのマニアックな話

タイ古式マッサージとはこんなに奥が深いのです

風と彼女のストーリー

息子の卒業式の日、体育館の入口でただなんとなく式典を眺めていた。色々あって私立から地元の公立学校へと転校し、1年だけ在籍していたが、集団生活に馴染めない上、担任との折り合いが悪く、夏休みが終わる頃からほとんど学校には行かなくなった。私も息子も学校にはいい思い出がない。幼稚園の頃から頻繁に呼び出され、あれこれお叱りを受けていたため、私も息子同様学校が嫌いだった。

式の後半、ニット帽にジーパン姿のラフな人が私の横に来た。彼女の息子もウチに負けず劣らずの問題児だとは知っていたが、挨拶をする程度で直接話したことはなかった。

「ちょっとこれ見てよ」

ニット帽を取ると、いくつもの10円ハゲがあった。

「どうしたんですか、もしかしてストレス?」

「そう、アイツのせいで私の頭は惑星だらけよ」

私は思わず笑ってしまい、式そっちのけで色々な話をした。

「アイツ学校には行かなかったけど、家で姉ちゃんの子供の面倒見てたんだよね。オムツ変えてお風呂入れてミルクあげて寝かしつけも上手でさ、ねーねーが仕事の間、ずっと甥っ子の相手して、優しいところあるんだよ」

「そーゆーことも勉強ですよ!」

「これから先も色々あるかもしれないけど、生きていける場所で生きていけばいいさーね」

さっきまで「結局私の息子はどこの学校にも馴染めなったな」と複雑な気持ちで式に参列していたが、彼女のおかげで気持ちがすーっと楽になった。

2人だけの卒業式。

体育館の外に出て清々しい空気を吸いながら

「最後の最後でいい思い出ができました。ありがとう」

そう伝えると

彼女は「とりあえず、卒業おめでとうだよね」と笑った。